離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
「なにをしに来たのかね」
弘和の重低音がお腹にまで響く。
「お庭をお手入れさせていただけないでしょうか」
先日千景と訪問したときに、せっかくの広い庭が荒れているのが気になっていたのだ。フェアの準備が終わったら、庭をきれいにさせてもらおうと考えていた。
弘和は眉を上下に動かし、眉間に皺を寄せる。この娘はなにを血迷っているのかといったところか。不審そうに百々花と昌也を見た。
「こちらは弟の昌也です」
急いで紹介すると、昌也もそそくさと頭を下げる。ぷいと顔を背けて逃げだされずに済み、そこはホッとした。弟がそんな態度を取れば、心象がさらに悪くなる。
「どんな魂胆があるのか知らないが、やっていただかなくて結構。ごますりは必要ない」
「魂胆はありませんし、ごますりでもありません。ただ、庭がかわいそうだと思ったんです」
千景から以前、亡くなった彼の母親は草花が大好きだったと聞いたことがある。