離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
きっと生前は花が咲き乱れる美しい庭だったのではないか。それを蘇らせたいと思っただけだ。
弘和は腕組みをして百々花をじっと見た。尻尾を巻いて逃げだしたくなるほどの威力をもった目だ。眉根はぐっと下がり、眉尻が斜めに上がる。
どこかで見たことのある風貌だと思ったら、子供のころによく読んだ絵本に出てきた赤鬼だ。それよりももっと迫力がある。
でも、ここで背中を向けるわけにも、目を逸らすわけにもいかない。
百々花は呼吸すらままならない状態で、弘和の言葉を待った。
「勝手にしたらいい」
どのくらいそうしていただろう。表情をほんの少しだけ緩めて弘和が口を開く。諦めにも似たような口調だ。
「ありがとうございます!」
百々花は腰を直角に折ってめいっぱい頭を下げた。
一時はどうなるかと内心ヒヤヒヤしていたが、これで心置きなく手を出せる。
弘和は百々花が頭を上げるまでの間に、そこからいなくなっていた。