離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
「昌也くん、それ貸して」
百々花はナイロンバッグから道具類をすべて出し、作業がしやすいようにガーデン用エプロンを着た。薄曇りとはいえ夏のため、つば広の帽子も必須だ。
念のためにと余分に持ってきたグローブをひとつ、昌也に差し出す。
「はい、これ使って」
「え?」
「手伝ってくれるんでしょう?」
なにしろ広い庭。人手はあったほうがいい。
「……ここ、全部?」
「もちろん」
一角だけやっても意味はない。庭全体だ。
辺りを見渡して目を見張る昌也に、強くうなずく。
百々花は昌也の胸にグローブを押しつけるようにして渡すと、好き放題に雑草が生えた場所にしゃがみ込んだ。
炎天下ではないものの、湿気を含んだ空気にじんわりと汗がにじむ。
手にした熊手で早速、土を掻く。そうすると地面が柔らかくなり、雑草を抜きやすくなるのだ。
手あたり次第にそうしては、長く伸びた草を抜いていく。とにかくその繰り返しだった。