離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活


◇◇◇◇◇
その夜、百々花は食事の準備を済ませてから、ひとりゆっくりとお風呂に浸かっていた。千景の帰りを待たずに先に入るのはどうかとも思ったが、汗をかいたまま彼を迎えたくない。

バスタブに入れたフルーティーな香りのバスソルトが、ガーデニングで凝り固まった身体を癒していく。

千景の庭の雑草がほぼ取り除かれたのは、夕方も押し迫った午後五時。途中近くのカフェでランチをとって休憩を何度か挟みながら、なんとか一日で雑草との格闘は終わった。

抜いた草をまとめたゴミ袋は持ち帰れず、家政婦に処分をお願いするしかなかったが、すっきりとした庭を見た彼女に労いの言葉をかけてもらえてホッとした。

あとは好き放題に伸びた木の枝を切ったり、花を植えたりしなければならない。完成するには、もう何日かかかるだろう。

夕食を作り終えたときに【今から帰る】と千景からメッセージが届いたから、そろそろ帰宅する頃か。
パウダールームで髪を乾かし終えて廊下に出たタイミングで、玄関から音が聞こえた。

――千景さんだ。

パタパタとスリッパの音を鳴らして玄関へ向かう。


「おかえりなさい」
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