離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活

千景の実家の草抜きをしていたのは、できれば内緒にしておきたい。もしかしたら弘和から〝余計なことをしにきた〟と報告があるかもしれないが、完成してから話したかった。


「いろいろ話を聞いていたんです。母とちょっとしたケンカをしたようで」


それは嘘ではない。草を抜きながら聞いたところによると、夕食を一緒に食べずに部屋にこもってゲームをやっていて叱られたそうだ。
昨夜はそれに腹を立てて家を飛び出したらしい。


「そうだな、姉なら当然だよな。でも」


自分に言い聞かせるようにも聞こえる。

千景はそこで言葉を止め、百々花を見つめた。胸が苦しくなるような切ない眼差しに心が惑う。

どうしてそんな目をするの……?

ふたりの間にあるのは、百々花の一方的な恋心だけだ。


「ひと回りも年下のヤツに嫉妬させられるとは思いもしなかった」
「……え?」
「もう我慢している余裕が俺にはない。百々花の気持ちが育つのも待っていられない」

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