離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活

「いや、少しなら」


千景は腕時計で時間を確かめ、少し考える素振りをしてから答えた。
百々花の誘いを断りづらかったのだろう。かえって余計な気を使わせてしまったようだ。
とはいえ、百々花も一度言った手前引っ込みがつかない。


「では、こちらへ」


千景を店の入口へ案内した。

するとそこで、店内を覗くブレザー姿の女の子がいるのに気づく。低気圧の置き土産である強い風にサラサラの髪をなびかせながら、どうしようかと迷っているふうだ。


「いらっしゃいませ」


背後から百々花に声をかけられ驚いたのか、女の子の肩がビクンと弾む。肩を持ち上げたまま、ゆっくりと百々花の方に振り向いた。
猫のように大きな目をくりくりとさせ、百々花と目が合うと「すみませんっ」と両手を脇に揃える。


「お花を見にいらしたんですよね? 中へどうぞ」
「あ、いえ、その……」
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