離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
千景は百々花の腰を強く引き寄せ、唇を塞いだ。
ものの数秒のうちの展開が、百々花の頭を混乱させる。
我慢ってなに? 待っていられないって?
そうして考えていられるのは最初のうちだけ。唇をなぞるように口づけていた千景は、いきなり百々花を抱き上げた。
「千景さん?」
「百々花を抱きたい」
直球で言われ、鼓動がドクンと弾む。
初めて求められたうれしさが込み上げるが、千景の心はまだ見えない。ただ単に、ほかの男に好意を寄せられたことに対して嫉妬しただけなのかもしれないから。愛情とは別物の可能性のほうが大きい。
もしくは、夫婦ごっこの延長だ。
浮かれそうになる気持ちを必死に押し込める。ぬか喜びをして、後で傷つくのが怖い。
千景は百々花をそのままベッドルームへと連れ去った。ホテルのラウンジで婚姻届にサインをして、記憶のないままに目覚めたベッドだ。
千景は百々花をそっとベッドに横たえた。
素早くジャケットを脱いでネクタイを外し、あっという間にワイシャツも脱ぎ捨てる。あらわになった千景の上体を見ていられずに、百々花は目を逸らした。