離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活

◇◇◇◇◇

仕事を残しているため帰るわけにいかない千景は、行きつけである会員制スポーツクラブの場所を教え、そこで待ってもらうようにした。
スカッシュの勝負は今夜。後日に引き延ばすのは性格上、好きではない。

そうして午後七時。千景は昌也を待たせているスポーツクラブに到着した。
商業施設や企業が入居するタワービルの二十階。爽快な景色を眺めながらマシンが使えると人気のクラブだ。

ウエアに着替え、コートで待つ昌也のもとへ向かう。歩きながらストレッチをして、身体を解した。

昌也はコート内で軽くボールを打ち、ウォーミングアップをしていた。千景に気づき、構えたラケットを下ろす。
昌也がシュプリームウエディングを出てから三時間が経過。身体は十分にあたたまっただろう。


「待たせたな」
「逃げだすんじゃないかと思った」


昌也がフンと鼻を鳴らす。

そう予想されていたのだとしたら心外だ。逃げも隠れもするつもりはない。
ゲーム開始前から、ふたりの間に火花が散る。昌也は、千景が調子を整えるためにボールを打つ様子を厳しい表情でじっと見つめた。
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