離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
五ゲームマッチのため、後がない。次のゲームを落とせば千景の負けだ。
タオルで汗を拭い、水分補給をしながら昌也を見ると、肩こそ少し弾んではいるが表情に余裕をたっぷりと滲ませる。勝ちを確信したか、意味深な笑みを千景に向けた。
いよいよ絶対に落とせない三ゲーム目が始まる。
千景のサーブから始まり、これまで同様にストレートのラリーが続く。昌也はもちろん、千景も相手の隙を見極めようと度々クロスに振った。
スカッシュはテニスとビリヤードを掛け合わせたような競技だと言う人がいるが、まさにそのとおり。前方だけじゃなく四方の壁を使い、角度や高さを考えなければならない複雑なものだ。
球するごとに、どういうボールが軌跡を辿るか計算しなければならない。決断のスピードも求められる。相手との頭脳戦でもあるのだ。
十対九。三ゲーム目にして、初めて千景がリードを奪った。
だが、昌也はまだ余裕の表情。二ゲームをすでに取っているから当然だろう。
ここは絶対に勝ってやる。
千景が挑戦的な視線を向けると、昌也は手の平を上にして肩を上下に動かし、外国人がするような仕草をした。
完全に舐めてるな。