離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活


その意気込みどおり四ゲーム目もなんとかゲットした千景は、五ゲーム目の終盤へきて、かなり苦しい戦況を強いられていた。

無理な体勢でのショットが足に負担をかけ、膝を痛めたようなのだ。足を突く度に鈍い痛みが走り踏ん張りがきかない。

スコアは十対十のデュースとなり、さらに二点が必要な場面となった。
ここで昌也に先取されれば、完全に不利になる。

足を負傷していることは絶対に知られてはならない。

お互いに無言のまま、強い視線を交わし合う。どちらも声も出せないくらいに体力を消耗していた。

千景のサーブがフロントウォールのラインぎりぎりに当たって、昌也が打ち返す。

そこから長い打ち合いが始まった。一本のラリーでは、その中で相手にいかに少しずつプレッシャーをかけるかが重要である。
ラリーが続くほど、足の痛みは増していく。早く決着をつけなければ、千景の足はもたない。

負傷をひた隠し、昌也の動きを見極める。

バックハンドの打ち合いから前に落としていく。Tポイントからストレートを打つと見せかけ、コーナーへ裏を突く。昌也は一歩出遅れ、ラケットは空振り。

千景がワンポイント、リードした。
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