離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
よし! このまま次もいくぞ!
拳を軽く握り、小さくガッツポーズをとる。
昌也は悔しそうに唇を噛みしめた。
あともう少し。頼むから、もってくれ。
祈りを込めて足を撫でる。
昌也のサーブから、再び長いラリーの応酬。いつまでもチャンスを伺っている余裕はない。
千景は、コート前面からドロップを打つと見せかけ、サイドウォールにあててからフロントウォールに当てるボーストショットを繰り出した。
裏をかかれた昌也が、急いで反対方向へと足を向ける。シューズがフロアを踏みしめ、ひときわ大きくキュッと鳴った。ボールを拾うべくラケットを伸ばす。
しかし僅かに届かず、ボールはツーバウンドしてバックウォールへと転がっていった。
唖然とした顔でコロコロと転がるボールを昌也が見つめる。
「嘘だろ……」
そのひと言にすべてが集約されている。昌也は、まさか自分が負けるとは思ってもみなかったのだろう。
終わった。
千景はその場に崩れ落ち、フロアに仰向けに倒れ込んだ。