離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
勝利は掴んだものの、身体はボロボロだ。胸を激しく上下させ、周りの酸素をすべて吸い尽くす勢いで呼吸をする。全身から汗が噴き出し、滝のように流れている感覚だった。
身体が動かない。完全に脱力。指一本ですら動かす力が残っていなかった。
しばらくそうしてフロアの一部と化していると、昌也が近くにしゃがみ込み、千景の顔を覗き込んだ。
「俺の負けだ」
起こすつもりか、千景の手を握り激励する。
「ほら、しっかりしろ」
汗こそ掻き、息もあがっているが、さすがひと回り年下。寝転がるほど疲労していないどころか、千景の手を引いて起こす力も残っているらしい。
悔しいが、そこは敗北だ。
手を借りて立ち上がろうとするが、膝に走った痛みでもう片方の膝を突く。
「おい、大丈夫か? まさか足を痛めたとか言う?」
「……そのまさかだ」