離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
「じゃ、俺は帰るから。百々花、あとはよろしく」
「えっ、あ、うん、それはいいんだけど」
ふたりの顔を忙しなく見て戸惑う百々花に、昌也は「じゃ」と言って身を翻して帰ってしまった。
「なにがあったんですか?」
「昌也くんと勝負してきた」
「勝負って……まさか殴り合いの喧嘩ですか!?」
絶対に千景を認めないと言っていた昌也を思い出し、背中をひやりとしたものが伝う。昌也が喧嘩っ早いという話は聞いたことはないけれど、若気の至りなんという言葉もあるくらいだ。
百々花が焦って隣に座ると、千景はククッと肩を震わせた。
「さすがに殴り合いはしないよ」
「ですよね」
千景と暴力はまったく結びつかない。それに落ち着いてみれば、ほかに怪我をしているような場所もなさそうだ。唇が切れたり、アザができたりしているわけではない。
それじゃ、勝負って……?
百々花が小首を傾げていると、千景は「スカッシュ」と頬を掻いた。