離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
「かわいいっ。うん、これにしようかな」
「では、これで花束をお作りしますね」
女子高生に予算を聞き、黄色いガーベラに手を伸ばす。
「どうしたら花を長持ちさせられますか?」
「ガーベラは茎がやわらかくて腐りやすいので花瓶には浅く水を張って、毎日少しずつ茎を真っすぐにカットして、切り口を新鮮な状態にしておくと花まで水を吸い上げてくれます」
「そうなんですね」
説明をしながらガーベラを束ね、ラッピングペーパーでくるんでいると、不意に横に人影が差す。
「時間なので失礼するよ」
千景だった。
コーヒーメーカーにカプセルをセットして彼を待たせたままだったと、今さらながら気づき慌てる。花に夢中になり、うっかり忘れていたとは口が裂けても言えない。
「あ、あの!」
手を動かしたまま呼び止めるが、千景は背を向けたまま軽く手を上げるだけ。そのまま店を出ていってしまった。