離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
「それにしても百々花は健気だねぇ」
歌うように愛華が抑揚をつける。
グローブをはめた手の甲で額に滲んだ汗を拭いながら、百々花は「そうかな?」と返した。
「交際もしないでいきなり結婚するから、一時はどうなるかと思ったけど」
「愛華が焚きつけたんじゃなかった?」
わざと批判がましく言う。怒っているわけでは決してない。
百々花の記憶が正しければ、千景に『よかったら百々花と結婚してもらえませんか?』と言ったのは愛華だ。
今となれば、そうしてくれた愛華には感謝しかない。あそこで愛華のひと言がなければ、百々花たちは結婚に至っていなかっただろうから。
「あれー? そうだった?」
愛華がとぼけて笑う。
「そうだよ。でも、ありがとう」
「やだな、突然なによ」
「愛華のおかげで幸せだから」
素直な気持ちを伝えると、愛華は一瞬キョトンとしたような顔をした。そして、次の瞬間には百々花の肩をパチンと叩く。