離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
庭に面した大きな窓ガラスの障子が開き、そこに千景が姿を現す。
「えっ、千景さん……?」
どうして彼がここにいるのだろう。来るという連絡もなかったし、来た様子もわからなかった。
窓を開け、百々花に微笑みかける。
「あの、千景さん、いつの間に――」
百々花は言いかけた言葉をそこで止めた。千景に促されるようにして弘和が現れたのだ。
うしろで手を組み、憮然とした表情は相変わらずの威圧感だ。それに耐えきれなかったのか、隣に立つ愛華が一歩後ずさりをした。
窓を開け、小上がりに置かれたサンダルを履いた千景が庭に下り立つ。振り返って弘和にも下りるように優しく諭すと、渋々といった様子ながら弘和は従った。
「勝手な真似をして申し訳ありません。でも、どうしてもこうせずにはいられませんでした」
慌てて頭を下げ、百々花が謝罪する。
百々花の前まで来た千景が、肩にそっと手を置いた。