離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
「謝らなくていいんだ」
おそるおそる顔を上げると、堅い様子で庭を見渡した弘和の表情がみるみるうちにやわらかなものに変わっていく。ゆっくりと足を進め、ポーチュラカを眺め、ピンク色のペンタスに触れては懐かしそうに目を細めた。
「美佐子が帰ってきたようだな。ジニアは美佐子が好きだった花だ」
亡くなった妻のことだろう。生前を思い出しているのか、弘和はとても優しい顔をしながら一歩一歩庭を踏みしめていく。時間をかけてぐるっと回った弘和は、百々花たちの前で足を止めた。
「式はいつ挙げる予定なんだ」
「えっ……」
唐突に式を持ち出され、頭が混乱する。
それはもしかして……。
「千景さんとの結婚を認めてくださるんですか?」
「認めるも認めないもないだろう。とっくに入籍は済ませているじゃないか」
「申し訳ありません」
そこを突っ込まれると、とてもつらい。