離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
頭の重さと格闘しながら呼びかけると、不意にコーヒーの香りが鼻をかすめた。彼女が淹れてくれているのかもしれない。
その匂いにつられるようにして近くのドアを開ける。すると、百々花の前にとてつもなく広いリビングスペースが現れた。
先ほどまで寝ていたベッドルームや廊下よりも、遥かに天井が高い。マットなブラックのペンダントライトが下がり、ここでもシーリングファンがゆったりと回る。
緩やかなアールを描いた窓の向こうには、広いバルコニーが見えた。
「愛華?」
真っ白なコーナーソファーのさらにその先にキッチンらしきスペースがあり、そこで人影が動く。
「あい……」
愛華と呼びかけようとした百々花は、すぐに口をつぐんだ。
彼女ではなかったのだ。
いや、愛華どころの話ではない。
どうして彼がここに!?
驚きと同時に心臓がドクンと音を立てる。