離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
百々花は笑いながら言い返した。
「幸せになれよ」
目は逸らしているし、ぶっきらぼうな言い方でもあるけれど、そこに気持ちがこもっているのは百々花が一番よく知っている。「ありがとう」と微笑み返した。
「利一さんは?」
「あぁ、父さんなら、緊張がひどいみたいでトイレの往復ばっかりしてる」
真奈加に聞かれて昌也がドアの向こうのほうを親指で指す。
真奈加に夢中でも、さすがに娘の挙式ともなれば、普通の父親のようになるらしい。二十年間ふたりだけで生きてきたのだ。その年月を考えると、百々花も胸が熱くなる。
あたたかな空気に包まれる中、ノックの音に続いてドアが開く。千景だった。
ウィングカラーのホワイトシャツにロイヤルブルーのタキシード。ジャケットには百々花が作ったブートニアが飾られている。
見つめ合うふたりを残して、真奈加と昌也がいそいそと部屋を出ていく。それと入れ違うようにして中に入ってきた千景は、手を取って立ち上がらせた百々花をギュッと抱きしめた。