離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
アルコールに飲まれたプロポーズ
「神谷さん、仕事上がるところ悪いんだけど、帰りがてらに『ミスティチャイム』さんに寄れる?」
閉店時間の午後七時。百々花が帰り支度を終えて店を出ようとしたところで、店長の皆川智也に呼び止められた。
三十五歳の皆川は都内に五店舗あるアリアシェリーの店長の中では一番の若手だが、営業成績は常にトップのやり手だ。
細身の長身で中世的な顔立ちをしているため一見優男に見えるが、頼りがいのある男である。
半年前に結婚したばかりの新婚で、五ヶ月後には赤ちゃんが生まれるらしく、その話になると途端に顔の表情筋が伸びる。
「はい、大丈夫ですけど、なにかあったんですか?」
地中海レストラン、ミスティチャイムは開店当初からアリアシェリーがグリーンを請け負っており、百々花が担当している店である。
「オリーブの葉が落ちちゃうらしいんだ」
皆川はレジカウンターで眉尻を下げた。
レジ上げは店長である皆川の仕事のひとつ。閉店してからひとり残り、いつも売上金管理を行っている。