離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活

両耳を塞いで首を横に振る。
愛華の言葉が耳に痛い。

父の幸せはうれしいが、ラブ度マックスのふたりをそばで見ているのは相当な試練である。
結婚するまで家を出てはいけないなんて、百々花にはあまりにもハードルが高い条件ではないか。

なにしろ恋愛経験は過去に一度きり。それも身体を求められて応じなかったのが原因で振られるという、暗黒歴史だ。
たとえ彼氏ができたとしても、結婚するまで身体の関係をもちたくないなどと、頭の堅いことを言って再び振られるのがオチ。

とはいえ、やはり身体を許すのは結婚してからにしたい。そこは譲れないのだ。


「百々花はお堅いからなぁ」
「こんな私でもいいって言ってくれる人が」
「いつか現れる?」
「……無理かも」


テーブルにぱったりと突っ伏した。
おーよしよしと、愛華が百々花の頭を撫でる。
お祝いなのか慰めなのか、今夜のお酒の名目がわからなくなる。

いいや、とにかく飲もう! 祝い酒でも涙酒でも、この際どっちでもいい!

百々花はグラスに口をつけ、ひと思いに飲み干した。


「いい飲みっぷりね。よし、今夜はとことん飲もう!」


おー!とばかりに拳を握って上げる。
ふたり揃って空にしたグラスをバーテンダーに突き出した。
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