離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
「家を出たいんです」
「百々花の父親が再婚して、あんまりラブラブ過ぎて目もあてられないんですって」
百々花に続いて愛華が補足する。
「ひとり暮らしをしようとは?」
「そうしたいんですけど、父に反対されていて」
プライベートを話すほど千景とは親しくない。それなのにペラペラと暴露してしまうのは、ほかでもなくアルコールのせいだろう。
気が緩み、必要のない話までする始末だった。
「家を出るのは結婚するときだと」
愛華の言うように、これではあの家で一生を終えるかもしれない。それもまた自分らしいではないかとも思う。
でもやっぱり寂しいな……。
恋愛らしい恋愛もせずにこのままかと、極端な方向に傾いていく。
お代わりしたカクテルも飲み干した。
「それなら……」
黙り込んでいた千景がゆっくり口を開く。
「俺と結婚すればいい」
耳を疑いながら百々花が焦点の合わない瞳で彼を見ると、千景はもう一度同じ言葉を繰り返した。