離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
スニーカーを忘れたシンデレラ


突発的なプロポーズから遡ること約十日前――。

ごくありふれた毎日の積み重ね。小学一年生のときに母親を亡くした以外、百々花は取り立てて変化のない日々を送ってきた。

両親が結婚二年目に建てた自宅は静かな住宅街のほぼ中心地にあり、当時は新興住宅地として人気があったそうだ。今はその時代から住み着いた人たちが暮らす、落ち着いた街並みとなっている。

小学一年生のときに病に倒れた母は呆気なく逝ってしまい、それから二十年、父の利一(としかず)は百々花を男手ひとつで育ててきた。

ところが昨年、ついに再婚。平凡な日常にちょっとした変化が訪れている最中である。

相手は勤め先の部下だった女性で、なんと十八歳も年下の三十七歳だ。父よりも娘の百々花のほうが年齢が近い。
彼女には十六歳のときに出産した大学三年生の息子がいるため、百々花には母親と同時に六歳年下の弟までできた。

新婚の邪魔はしたくないし、二十七歳は立派な大人。そろそろ独立して、ひとり暮らしをしたい。
そう申し出たが、利一に『結婚するまでは家にいるように』と一蹴されてしまった。

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