離婚前提。クールな社長と契約妻のとろ甘新婚生活
『まぁそうだけど』
まだ少し不満そうだ。
利一と真奈加のアツアツぶりは愛華も目の当たりにしたことが何度かあるため、百々花の気持ちは理解できるはず。
『それにしても百々花にしてはずいぶんと思いきったよね。石橋を叩いて渡るタイプなのに』
それは自分でも正直、驚いている。なによりも慎重になっておかしくない結婚を即決したのだから。
しかも、未来には離婚が待っている。そんな大それた決断をするなんて想像もしていない。
でも、それだけ家を出たいのも事実だった。
『ま、冒険するのもいいかもしれないね。百々花は安全な道を歩んできただろうから』
「冒険かぁ。そう考えたら、なんか楽しくなってきた」
『あれ? 私、なんか悪事に加担してない?』
愛華が茶化す。
「悪事なんて言わないで」
これは正式な契約だ。
念願のブライダル関連の仕事もできそうだし、どうせなら思いきり楽しんでいこう。
愛華と話したおかげで、驚くほど前向きに考えられるようになった気がする。……離婚に前向き、というわけではないけれど。
また飲みにいこうと約束を交わし、愛華との電話を切る。でもそのときは、アルコールをほどほどにしたほうがいいだろうなとも思いながら、百々花はスマートフォンをベッドに置いた。