死者の言葉〜最期のメッセージ〜

ジャッジメント

法医学研究所の監察医、霧島藍（きりしまあい）は黒いスーツに身を包み、いつもの研究所ではなく裁判所へと足を運ぶ。その顔はいつもより緊張していた。

裁判所の前に藍が着くと、カメラを持った多くの報道陣が振り返る。そして藍の周りに集まってきた。

「先生！昨日の裁判で弁護側からかなり強く言われていましたが、被告は有罪なのでしょうか？」

「被告は、先生を名誉毀損で訴えると発表していますが……」

「一言お願いします！」

報道陣に取り囲まれ、藍は身動きが取れなくなる。報道陣は口々に藍に質問するため、藍はどうしたらいいのかわからない。

研究所の所長である春川正人（はるかわまさと）から裁判で証言してほしいと頼まれたと聞かされ、藍は初めて証言台に立つことになった。

大富豪の男性の家の敷地内で、以前に付き合っていた女性の遺体が発見された。女性の死因は、首を鋭利な刃物で斬ったことによる失血死。頸動脈も切り裂かれていた。