死者の言葉〜最期のメッセージ〜
「藍が……藍が……誘拐されたなんて……」

朝子は真っ青な顔になり、その場に倒れるように座り込む。聖が「木下!」と朝子の顔を覗き込む。

「これは、ただの誘拐ではないな……」

如月刑事はそう呟き、「原刑事たちに連絡します」と言い部屋を出て行った。

「……霧島さん……」

大河は藍のことを想い、体を震わせた。



「外れて……。外れて……!」

窓から光がさす小さな部屋。藍は自分の手を後ろで拘束している手錠を外そうと懸命にもがいていた。

昨夜、見知らぬ男性にナイフで脅され、藍は何時間も車に揺られてこの部屋に監禁された。足には枷がつけられたため、逃げ出すことはできない。

「……ッ」

どれだけもがいても外せないとわかり、藍は諦めて部屋を眺めた。小さなベッドがあるだけの部屋だ。

ガチャリ、とゆっくりとドアが開けられる。藍を誘拐した男性がやって来た。手にはリゾットの入った皿を持っている。

「息が上がっているけど、暴れていたの?手錠で拘束しておいてよかったかも……」
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