死者の言葉〜最期のメッセージ〜
朝子が遺体を見つめる。

「三人はコートなどを着込んだ状態で発見された。××県は雪が降らない。自然に凍死は考えられないな」と如月刑事が言う。

「ということは、霧島先生を誘拐した犯人がこの三人を殺害した可能性があるということですよね」と原刑事も言う。

犯人に解剖結果を知らせるため、正人はマスコミに事件を発表することを決めた。

「藍さん、無事でいてください」

大河はポツリと呟いた。



藍は、ぼんやりと窓の外から見える空を眺めていた。拘束され、ただただ暇な時間が過ぎていく。

「夕食だよ」

ドアが開き、睦月圭が入って来た。彼は藍に食事を持って来たり、トイレに連れて行く以外は部屋に入って来ない。拘束しているため、逃げられる心配がないからだろうか。

「おでんを作ってみたよ。霧島先生は和食の方が好きなんだよね?」

「なぜそんなことを?」

「どんな人なのかずっと見ていたから。あなたが裁判をした時も、傍聴席で聞いていたんだよ」

ずっと知らぬ間に見られていたということにゾッとする藍に笑いかけ、睦月圭は温かいこんにゃくを藍の口元に持っていく。
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