死者の言葉〜最期のメッセージ〜

「どうした？」

「わ、わからない……。でも、と、止まらないの！」

藍は体を震わせ、泣きながら如月刑事に抱きつく。如月刑事は藍を優しく抱きしめていた。



藍は少し如月刑事に抱きついた後、一週間監禁されていた部屋を後にする。そして家の外へ向かうと、睦月圭がパトカーに乗せられるところだった。

「待ってください！」

藍は慌てて睦月圭に声をかける。睦月圭は無表情のまま藍を見つめていた。藍は言葉を選び、ゆっくりと口を開く。

「私は、監察医です。人を生き返らせることはできません。例え、どんな名医であっても人を生き返らせることはできません。しかし、私は沙羅さんのご遺体をからメッセージを受け取りました。監察医は唯一死者と話せる存在です」

藍は一歩前に出る。如月刑事が心配そうな目を向けていた。

「沙羅さんは、こんなことをあなたにしてほしいとは望んでいません。復讐をするのではなく、自分の分まで幸せに生きてほしいと思っていたのではないでしょうか。沙羅さんはとても優しい表情でした。あなたが沙羅さんの幸せを願っていたように、沙羅さんもあなたの幸せを願っていたのです」