いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─
「雅也と出会った頃の話だけどね、私には両親が決めた婚約者がいたの」

「そうなんですか?」

「うん。婚約者って言っても会ったこともなくて、でも親同士が決めたんだからいずれはその人と結婚するのかなって思ってたんだけど、創に同期の親友だって雅也を紹介されて、その次の日に結婚を前提に付き合って欲しいって言われて……何度か二人で会ってるうちに、あっという間に好きになっちゃった」

職場では凍えるほどクールな池崎課長に、そんな熱い一面があったとは!

初めて会った次の日に結婚を前提に付き合って欲しいと言ったくらいだから、池崎課長はおそらく未来さんに一目惚れだったんだろう。

私は未来さんの話を聞きながら形成したハンバーグを焼く。

フライパンの上で油の跳ねる音と、肉の焼ける香ばしい匂いがした。

「それで私は両親に、好きな人ができたからその婚約者とは結婚しないって言ったんだけど……昔からの繋がりがある人の息子だから縁談を断れない、結婚しろって」

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