いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─
「ありがとうございます、もう大丈夫」

「でもまた何かあると大変です。お一人では心配ですし、あまりご無理をなさらずおうちの方に連絡された方が……」

「すぐそこで人と待ち合わせをしているんです。持病があるもんですから、家の者には車で送ると言われたんですけどね、私は長時間車に乗るのが苦手で……。たまには一人で出掛けたいって、家の者の反対を押し切って出てきたんですけど、久しぶりに駅まで歩いて電車に乗ったら少し疲れてしまったみたい」

もうご高齢のようだし、無理をするのはあまり良くないけれど、無理をしてまで会いに来たのだから、よほど大事な用があるんだろう。

なんにせよ大事に至らなくてよかった。

「そうなんですね。どちらまで行かれます?」

「岡崎クッキングスクール……だったかしら。その隣にある喫茶店で待ち合わせているの」

なんと言う偶然だろう。

岡崎クッキングスクールは今日のお料理コンテストが開かれる会場だ。

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