いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─
時間的に約束をしている人と会えるのを見届けられるかはわからないけれど、心配だからお節介を承知で目的地まで送り届けるくらいはさせてもらおう。

「奇遇ですね。私はこれから岡崎クッキングスクールに行くところなので、良かったらご一緒しましょう」

「まぁ……そんなにお世話になってはあなたに申し訳ないわ」

「いえ、行き先は同じですし、その方が私も安心ですから」

「そうね……。それではお言葉に甘えてお願いしようかしら」

さっきから思っていたけど、言葉遣いや仕草がとても上品で、物腰のやわらかい人だ。

私よりうんと歳上の人にこんなことを言うと失礼かも知れないけれど、笑顔が少女のように可愛らしい。

もしかしたら良家の大奥様みたいな人なのかも……などと言う妄想を膨らませながら、女性のペースに合わせてゆっくりと歩いた。

目的地に着くまでに予定より大幅に時間を要してしまったけれど、女性を無事に送り届けることができてホッとした。

< 474 / 991 >

この作品をシェア

pagetop