いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─
喫茶店の前に着いて腕時計を見ると、彩名たちとの待ち合わせの時間が迫っていた。

「あっ、もうこんな時間……。じゃあ、私はちょっと急ぎますのでこれで……」

「待って。きちんとお礼をさせていただきたいから、お名前と連絡先を教えてくださる?」

私はお礼をされるほどのことは何もしていないし、今の私には連絡先を教える時間もない。

「いえ、お礼をしていただくほどのことは何もしていませんので、どうかお気遣いなく」

私が急いで立ち去ろうとすると、女性は穏やかな笑顔で「ありがとう」と言って、胸の前で小さく手を振った。

私も「お気をつけて」と手を振り会場へと急いだ。

到着はギリギリになってしまったけれど、あの女性の笑顔が見られて良かったと思った。


予定外の出来事があってギリギリにはなったけれど、なんとか待ち合わせの時間に間に合った。

彩名も果歩ももう到着しているだろうと思っていたのに、待ち合わせの時間を過ぎても二人はなかなか現れない。

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