キミに伝えたい愛がある。
文化祭前日。


ようやく雑用も終わりが見えてきた。


劇のリハーサルも終盤に差し掛かり、裏方さんたちは段ボールと模造紙で作った背景を設置し、演技班の人たちに小道具の説明をしていた時に事件が起こった。



「愛宮さん、ちょっとこれ直したいからあっちから裁縫道具持ってきてもらえる?」


「あ、うん」



取りに行こうと散らかっている教室を横断していた時だった。



「うわっ!」



―――カタン!


―――ドスン!




「愛宮さん、大丈夫?ってか...ああ!!」


「うわ、マジ最悪」


「えっ、ヤバくない?」


「ヤバイってこれは」


「ラストで使う背景だよね、これ...」



全身を強打した上にクラス中の視線が痛かった。


ゴミに足をとられた私はよろけ、その拍子に赤のペンキを倒した。


ラストシーンで使う模造紙に赤が広がり、台無しになってしまった。



「これやり直しだよね...」


「ねえ、ほんと最悪なんだけど」


「マジでやりたくな~い」



そう言われても謝ることしか出来ない。



「ごめんなさい...」


「愛宮さんこれ作り直せないよね?」


「はい...」


「じゃあ、誰がやんの~」


「ウチらやんないから」


「あたしもパス。これから塾あるし」


「山本くんたちは?」



男子たちは私に視線を投げかけてから、女子たちに向かってぼそぼそと呟いた。



「僕たちも用あるから...」



本当はやっても良いのだけれど、私を悪者に仕立てあげる手伝いをしないと何か言われそうだからという恐怖で男子たちは断ったのだろう。


つまり...そういうことだ。



「私がやります...」


「あっそう。じゃ、よろしく」



私は廊下に追い出され、1人で背景の修復にかかった。


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