キミに伝えたい愛がある。
なんとか落ち着いた時には6時を過ぎていて私たちは急いで作業に取りかかった。


また泣きそうになるのを必死に堪え、ペンキの1件のことを話しながら進めた。


りっくんは私のことを責めないでいてくれたし、私はそんなりっくんに救われた。



「ちーはさ、もっと自分の意見とか思いとかちゃんとぶつけた方が良いと思う。全部受け止めてたら、ちーが損する。ちーに泣かれたら俺、辛いよ。ちーには笑っててほしい」



なんて、涙をそそるようなセリフを言うものだから、私はまた泣きそうになった。


でも、泣いたらりっくんが悲しむと分かったから泣かなかった。


りっくんにこれ以上私のことで迷惑をかけたくないし、悩んでほしくない。


私もりっくんには笑っていてほしい。



「よーし、後はENDを塗るだけだな。ちー頑張ろう!」



りっくんのお手伝いのお陰でなんとか完全下校時刻に間に合った。


先生方に睨まれながら学校を後にし、私たちは家路を急いだ。



「りっくん今日はありがとう」


「改めて言わなくても分かってるよ」


「でもこういうのはちゃんと伝えないと」


「随分律儀だな」


「まあ、それが私の意思だから。りっくんもさっき言ってたじゃん。自分の意見とか思いとかちゃんとぶつけろって」


「そうだけどさ...」



りっくんはだんまりしてしまう。


一体どういうことなのだろうか。


照れくさいとかそんな感じかな?


ま、いいや。


私はなるべくりっくんの言う通りにする。


それが迷惑をかけないやり方なら、やらないという選択肢はないのだ。


そんなことより、明日の文化祭のこととか、最近話題の映画のこととか、りっくんと話したいことはいっぱいあった。


普段自分から話題を提供することは滅多にないけど、自然と話をふることが出来た。


りっくんといると自然体でいられる自分に気付いて嬉しくもあり、少し切なくもなっていた。


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