キミに伝えたい愛がある。
あっという間に時は流れ、私の家が見えるところまで来た。



「そろそろお別れだね」


「何感傷的になってんの。俺との別れがそんなに寂しい?」


「そ、そ、そういう訳じゃ...」



寂しくないなんて言ったら嘘になる。


こんな気持ちになるなんて私...どうしちゃったの。


りっくんにはめぐちゃんがいるんだから、いつまでも一緒にいちゃダメなんだよ。


何があっても、私にとってりっくんとめぐちゃんは大切な"幼なじみ"。


2人を困らせたり、傷つけたりしたくない。



「あのさ、ちー」



りっくんが突然話し出す。



「何?」



私が聞き返してからしばらくの沈黙が流れる。


そうこうしているうちに、家の前に着いてしまった。


門扉を開ける前にりっくんを見ると、りっくんも私を見つめた。



「ちーは俺の好きな人知ってる?」


「えっ...」



だってそれはめぐちゃんじゃないの?


だから付き合ってるんだよね。


好きだから付き合うのが普通。


そう。


好きだから付き合うんだよ...。


お互いに好きだから...。


もしかして...違うの?



「もし俺が...ちーのこと好きって言ったらどうする?」


「えっ...。えっとぉ...」



りっくんの透き通った漆黒の瞳に見つめられ、私の心臓は一瞬、いや数秒止まった気がした。


やがてりっくんがにんまりと笑い、私の頭に手を乗せる。



「冗談だよ、冗談。ごめん、本気にしちゃった?」


「えっと...」


「ほんとごめん。ちーは何でも本気にするから面白くてつい。ってことで今のは無し!」


「うん...」


「んじゃあ、2日間楽しもうな!」


「うん。楽しむよ」


「ちーいっぱい笑えよ。ちーが笑ってなかったら俺が笑わせにいくから。じゃあまた明日。バイバイ」



りっくんが去っていく。


私はバイバイを言えなかった。


なんだか、言いたくなかった。


言ったら本当に居なくなりそうで、2度とりっくんに会えなくなるんじゃないかなんてバカなことを考えたりして、口が動かなかった。


というよりそれ以上に自分の中に生まれつつある生ぬるい不思議な感情を制御しなくちゃならないなんて思っていた。


私には現状維持が必要。


誰の邪魔もしてはいけない。


ここで全てをストップするんだ。


何もかも動き出したら...


そのときは...


終わる。


私の意思は言わない方が良い。


知らない方が良い。


そうすればうまく行く。


そう思う。


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