キミに伝えたい愛がある。
自宅の最寄り駅のトイレにひきこもり、私は1時間近く泣いていた。


顔を洗って駅を出て家に帰ると親戚が集まって祝賀会の準備を進めてくれていた。


私はせっかく準備してくれたご馳走を食べないわけにもいかず、口に一気に詰め込むと、勉強を理由に自室に引きこもった。


どうしてこんな生き方しか出来ないのか。


どうして人を無意識に傷つけてしまうのか。


考えても答えは浮かんでこなかった。


これ以上考え続けても自分を嫌いになるだけ。


もう眠ってしまおう。


布団を引こうと押し入れに手をかけたその時だった。



―――ブーブーブーブー...。



スマホが鳴り出した。


慌てて画面を開くと、電話はりっくんからだった。


出るか否か数秒迷い、結局出ることにした。



「もしもし」


「ちー今どこ?家?」


「うん、そうだけど」


「今さ、ちーの家の前にいるんだけど出てこれる?」


「まあ...うん」


「何分後でもいいから来て。ちーが来るの待ってるから」



恐らくりっくんに会う最後のチャンス。


大泣きしたせいで目は腫れてるし、体はだるい。


でもりっくんにお別れをちゃんと言いたかった。


ここできちんと言わなきゃ前に進めない。


私の望む未来にりっくんがいることはない。


変えることの出来ない運命を私は握ってしまったのだ。


自分の過ちで。


自分の選択で。


自分の意思で。


私は勢いよく玄関を飛び出した。



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