キミに伝えたい愛がある。
「あっ、ちー。来てくれた。...って、目が腫れてるけどどうした?なんかあった?」


「大丈夫。無事卒業出来たなあって実感して泣いただけだから」


「本当に?」


「本当だよ。りっくんだって泣いたでしょ?」



りっくんは首を真横に振った。



「卒業したからって一生の別れになるわけじゃないんだし、泣かないよ」


「そう」



一生の別れになるわけじゃない。


私はそう思えない。


今日を境にみんなと別れることになると思うし、何よりりっくんと別れることが辛い。


また会えてもその時にはお互いのことを忘れてしまっているのではないか、なんて考えちゃう。



「俺さ、2週間後にはあの家出て向こうで暮らすんだ。ちーはここで暮らすんだよな?」


「受かればね。発表明後日だ...」


「ちーなら大丈夫だ。ちーはがんばり屋だし、人の話ちゃんと聞くし、素直だし。のびしろしかない」


「そんなに誉めちぎってどうするの?私そんな優秀な人じゃないよ」


「いいじゃん。ちーに伝えたかったんだから」


「え?」



りっくんは鼻をこすった。


りっくんなりの照れ隠しかもしれない。


それからお互い何も話さず、帰りもせず、ただ冷たい風に吹かれながら沈黙の時を過ごした。


私もりっくんに何か伝えなきゃ。


そう頭では考えられてもどう言葉にしたら良いか分からなかった。


遠くに行っても頑張ってね。


たまには戻ってきてね。


また会えるの、楽しみにしてる。


その前に卒業できて良かった。


今までありがとう。


...。


そのどれも口に出来なかった。


その代わりに口から出てきたのは思ってもみない言葉だった。


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