キミに伝えたい愛がある。
しかし、事態は進行していた。



「分かりました...。私がサードやります」


「ありがとう。高瀬さんは実力があるんだから大丈夫だよ。3年生が抜けたらファーストよろしくね」



ドアの向こうから聞こえてくるのは、部長さんと莉音ちゃんの声だった。


部長さんは自分が嫌われることを選んだんだ。


私は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。


でももう終わってしまったのだ。


私に出来るのは謝ることくらいしかない。


少し離れたところに移動し、部長さんが出てくるのを待った。



しばらくして部長さんが出てきた。



「部長!」


「あっ、ちゆりちゃん。先生から話聞いた?」



私は勢いよく頭を下げた。



「すみません」


「えっ...どうしたの?なんで謝るの?」


「私の代わりに言ってもらったから...」


「そんなの気にしないでよ。僕がちゆりちゃんにやって欲しかったから直談判しただけ。高瀬さんもOKしてくれたし、良かったよ」


「本当にごめんなさい」



私がそう言うと、部長さんの手の平が私の肩に乗った。


いつもはユーフォニアムのピストンの上にある手が自分の肩の上だと思うと、なんだか不思議だった。



「ちゆりちゃん、敬語止めよう」


「あっ...」


「同級生なんだし、去年までと同じく"空くん"でいいよ」


「うん、分かった。じゃあ、空くん...練習頑張ろうね」


「頑張ろう。じゃあまた後で」



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