キミに伝えたい愛がある。
ひとしきり笑った後、私はりっくんに言った。



「ありがとう、助けてくれて。りっくんがいなかったら、私、死んでたかも」



「死なせねえよ。ちーは俺の1番大切なやつだから」


「なにそれ?かっこつけてるよね、絶対」


「こういう時くらいかっこつけさせてよ」



なんていっているが、私は知っている。


りっくんは...イケメンだと。


私の幼なじみは美男美女で、私にはもったいないくらいの人たちなのだと。



「ちー」


「何?」


「家まで送ってく。その間に話聞くわ。悩んでんだろ色々と」


「ま、まぁ。色々と...」



話すかどうか迷ったが、結局私は大会曲のパートのことも空くんのことも話した。


明日はめぐちゃんに相談するつもりだけど、その前にりっくんの意見も聞いておこう。



「りっくんはどう思う?」


「俺は...ちーがやりたいことをやればいいと思う。パート割りにしろ、青木くんのことにしろ、ちーの気持ちが大事だろ?」



確かにそうだ。


相手のこと、周りのことを考える前にまず自分のことを考えなきゃ。



「俺は...ちーの奏でるホルンの音は世界一温かくて優しくてちーらしくて...好き、だ」


「ありがとう。りっくんに言われるとなんかむずがゆいけど」


「なんだと~!」



脇腹をこちょこちょされる。


昔から私はこれが苦手で、2人同時に襲撃された時には、スカートがめくれてパンツが見えるのも気にせずに笑い転げていた。


懐かしい。


今までだってこんな感じだったはずなのに。


りっくんとは少し距離を取っていたからかもしれない。


物理的にも、


心理的にも...。



「あっ...着いちゃった」


「なんだよ、俺とのお別れがそんなに寂しいのか?」


「そんなこと言ってない!もう、いい加減子ども扱い止めてよ!」


「分かった分かった!じゃあ、また明日!さようなら、ちゆりさん」


「さようなら陸さん」



バイバーイと大きく手を振る。


りっくんは振り返らず右手で手を振り返す。


りっくん、ちょっとナルシストっぽくない?


うんうん、そんな気がする。


元がいいんだから変にかっこつける必要無いのに。


なんて思いながら玄関に向かう。


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