副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜

実家に行こうか……
ううん。
お母さんを心配させるだけだから、やめておこう。
でも、自宅にはいたくない。

私には、他に行く宛がないんだと自覚して、ますます気分が沈む。

とりあえず、数泊できるように荷物を準備して、どこかゆっくりできるところに行ってみよう。

そう決めて、急いで自宅に向かった。
その途中、今朝から何度目かの着信を告げるバイブが響いてきた。
相手は、やっぱり啓太さんだった。
金曜日以来、全然返事をしていないし、何度かなったインターホンも、多分啓介さんだけど応答しなかったから、気にかけているのだろう。
そこまで考えて、頭を振った。


違う……



捨て駒なんて、気にかけるはずない。

まだ私に真実を知られたことを、啓太さんは知らないのだろう。
スマートフォンをカバンに戻して、自宅へ急いだ。