副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
とりあえず、篠原さんからのメールを開いてみた。

『体調はどう?陽から聞いたよ。その場の感情で、早まった判断をしちゃだめだ。じっくり考えて。
それから、東山さんとも、ちゃんと話をするべきだ。彼から俺のところに、連絡が取れないって電話があったから、現状を伝えたよ。本当に心配してたぞ』


ううん、篠原さん。
それはきっと違うから。
心配をしてるのは、私の安否じゃない。
身代わりがいなくなってしまうことだ。


電源、入れなきゃよかった。
荒んだ気持ちが溢れてくる。


『連絡が遅くなってすみません。しばらくお休みをいただきました。今後のことを、ゆっくり考えてみます』

その場しのぎの、嘘のない無難な返事をした。



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