副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
「……いつからですか?」

「いつからか……あのパーティーで再会した瞬間かな。軽く聞こえてしまうかもしれないけど、あの時僕は、君に一目惚れをしたんだ。でもそれは、決して外見のことだけではない。
君の名前を聞いて、表情に面影を見つけて、僕はすぐに発表会に出ていた子だって気づいた。もちろん、あの頃は恋愛感情は抱いていなかった。君は幼かったしね」

当時を思い出したのか、東山さんは懐かしむような優しい表情をしている。

「僕は社長の一人息子として、幼い頃からいろいろな教育を受けていて、自由があまりなかった。いつしか、自分の感情を隠して、いつも偽物の笑顔を顔に貼り付けていた。その方が、なんでもうまくいったからね。
そんなふうになった時、君に出会ったんだ。喜怒哀楽をストレートに表す姿に、羨ましいと思った。ずいぶん小さな子に、そんなふうに思うなんておかしいかもしれないけど」

苦笑した東山さんの目は、すごくさみしそうに見えた。

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