副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜

翌日、啓太さんは約束の１７時ちょうどに、私を迎えに来てくれた。
私の左手には、啓太さんがくれたダイヤの指輪がはめられている。
啓太さんは、改めて指輪をプレゼントしたいって言ってくれたけど、この指輪だって、啓太さんが私のことを想いながら選んでくれたものだ。
だから、私はこれがいいと、渋る啓太さんをなんとか納得させた。

「啓太さん、うちの母は、週末大丈夫でした」

「そうか。じゃあ、土曜日に二人で会いに行こう」

「はい」



「美鈴、立花のことだけど、美鈴にひどいことを言ってしまったって話してた。僕の秘書を外れることになった。本人も納得しているから、心配ない」

人を好きになる気持ちは、私も啓太さんに教えてもらった。
だから、いくらひどいことをされたとはいえ、立花さんの気持ちを考えると、恨むだけじゃない、複雑な気持ちになった。