副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
「美鈴。今日はこの後も空いてる?」

「はい。大丈夫ですよ」

「じゃあ、一緒にディナーへ行こう。何が食べたい?」

「なんでも大丈夫ですよ。啓太さんにお任せしてもいいですか?」

「ああ、もちろん」


啓太さんが連れてきてくれたのは、カジュアルな洋食屋さんだった。

「なんか、メニューとか、懐かしい感じのするお店ですね。この雰囲気、好きです」

「いい店でしょ?ここは、一人でもちょくちょく来るよ」



「よお、啓太じゃないか」

「叔父さん、こんばんは」

店員さんと、親しげに話す啓太さんに驚いた。

「そちらの美人さんは?」

「こちらは、佐山美鈴さん。僕の婚約者だよ。今、うちの親に紹介してきた帰りなんだ」

「佐山美鈴と申します」

「そうか!!啓太にもやっと嫁さんが来るのか!!
美鈴さん。私は啓太の叔父で、東山浩二っていいます。長年ここで、このお店をやってます」

「父の弟にあたる人だよ」

「いやあ、啓太、よかったなあ。こんな美人さんを捕まえて」

「この人だって女性を、やっと見つけたんだよ」

二人のやりとりに、恥ずかしくて頬が赤くなるのがわかる。

「てっきり、もう一生独身かと思っていたぞ。
美鈴さん、啓太をよろしく頼みます」

「こ、こちらこそ、よろしくお願いします」

「じゃあ、二人ともゆっくりしていきな」

叔父の浩二さんは、明るくてとても気さくな人だった。
それにしても、ご両親に加えて叔父さんにまで、一生独身とか言われていたことに、おもわず心の中で笑ってしまった。

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