副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
土曜日の9時半。
私と啓太さんは、私の実家を訪れるために、東京駅で新幹線を待っている。

「これから、美鈴の育った街を見られると思うと、嬉しいよ」

「前も言いましたけど、本当に何もないところですよ」

啓太さんの希望で、母との約束より早く着いて、ランチを食べながら街を散策することにしている。




「ここが美鈴の暮らしたところか」

新幹線を乗りた後、乗り換えをして実家の最寄駅に着いた。
改札を出ると、啓太さんが感慨深そうに呟いた。

「このあたりは、お魚料理がすごくおいしいんですよ」

「オススメのお店はあるの?」

「はい。母と行った、海鮮丼のおいしいお店があります」

「じゃあ、お昼はそこで食べよう」

なんの変哲もない街中を、啓太さんは何一つ見逃さない、というぐらい熱心に見ている。

ランチもすごく喜んでくれて、こちらも嬉しくなる。



いよいよ、私の実家に向かうことになった。


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