副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
「お母さん、ただいま」
「おかえり、美鈴」
「お母さん、電話で話した、紹介したい人を連れてきたよ。
こちらが今、私がお付き合いしている、東山啓太さん」
「こんにちは。東山啓太と申します」
「まあまあ。遠いところ、よく来てくれましたね。東山さん、はじめまして……ではないですね」
啓太さんが驚いた顔をした。
「僕のことを、見知っててくださったんですか?」
「もちろんよ。さあさあ、上がってください。中で懐かしい話でもしましょう」
「それにしても、美鈴が初めて連れてきた男の人が、あの東山さんだなんてねぇ……」
「お母さん、〝あの〟ってどういうこと?」
「あら、あなた覚えていないの?
あなた、ピアノの発表会に出るたびに、東山さんの演奏が聴けることを、楽しみにしてたじゃないの。
他の子の演奏中は、疲れちゃったり、おやつを食べたいって言ったりして、ちょこちょこロビーに出てたのに、〝お兄ちゃんのピアノを聴きたい!!〟って、その時だけはいつも、ホールに入りたがったのよ」
「おかえり、美鈴」
「お母さん、電話で話した、紹介したい人を連れてきたよ。
こちらが今、私がお付き合いしている、東山啓太さん」
「こんにちは。東山啓太と申します」
「まあまあ。遠いところ、よく来てくれましたね。東山さん、はじめまして……ではないですね」
啓太さんが驚いた顔をした。
「僕のことを、見知っててくださったんですか?」
「もちろんよ。さあさあ、上がってください。中で懐かしい話でもしましょう」
「それにしても、美鈴が初めて連れてきた男の人が、あの東山さんだなんてねぇ……」
「お母さん、〝あの〟ってどういうこと?」
「あら、あなた覚えていないの?
あなた、ピアノの発表会に出るたびに、東山さんの演奏が聴けることを、楽しみにしてたじゃないの。
他の子の演奏中は、疲れちゃったり、おやつを食べたいって言ったりして、ちょこちょこロビーに出てたのに、〝お兄ちゃんのピアノを聴きたい!!〟って、その時だけはいつも、ホールに入りたがったのよ」