副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
「さあ、上がってください」

「お邪魔しますね」

母をリビングに通すと、その広さに驚いていた。

「美鈴、あなたすごいところに住んでいるのね。これなら、子どもがたくさんできても、余裕で暮らせそうね」

いきなり核心をつくようなことを言われて、おもわず啓太さんと目を合わせた。

「お母さん、それなんだけどね……」

「美鈴、お母さんも疲れているだろうから、とりあえず座ってもらおう。
お母さん、こちらにどうぞ」

「ありがとう」

「お母さん、お茶を入れるね。お母さんは何にする?」

「紅茶をお願いしてもいい?」

「わかった」

キッチンへ行こうとすると、啓太さんに止められた。

「美鈴、僕がやるから。美鈴はお母さんと休んでて」

「ありがとう」

お茶を啓太さんに任せて、母の前に座る。

「あら、美鈴。ずいぶんとあまやかされてるのね」

「ふふふ。啓太さん、すごく優しいから」

「だめよ。あまえてばかりじゃあ……」

「お母さん、いいんですよ。僕がやりたくてあまやかしてるんですから」

手際良く紅茶をいれながら、啓太さんが答えた。



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