副社長の歪んだ求愛 〜契約婚約者の役、返上させてください〜
仮初めのシンデレラ
木曜日。
山岸さんの同行から帰って、事務仕事をしていると、プラスoneへ行っていた篠原さんが帰社した。
「ただいま」
「お疲れさまです。コーヒーでも淹れましょうか?」
「お願い。ところで美鈴ちゃん、東山さんが気にしてたよ」
「何をですか?」
「美鈴ちゃんが同席しなかったこと。どうしたのかって聞かれたから、社長に同行しているって答えておいたよ」
「そうですか……」
「今度会った時にさあ、昔話でもしてみたら?」
「篠原さん、すみません。当時のことは、楽しい思い出ばかりじゃないので」
少しだけ、声のトーンが低くなってしまう。
「あっ、ああ。ごめん」
父親を亡くしている事情を思い出したのか、篠原さんがしまったという顔をした。
「ごめん。デリカシーがなかったな。ただ、東山さんはいい人だよ。気にかけてくれてるみたいだからさ」
「はあ……」
そうは言われても、「同じ発表会に出ていましたね」以上に話が広がるとも思えないんだけど……
「じゃあ、コーヒーお願い」
篠原さんはそう言い残すと、副社長室に入っていった。
山岸さんの同行から帰って、事務仕事をしていると、プラスoneへ行っていた篠原さんが帰社した。
「ただいま」
「お疲れさまです。コーヒーでも淹れましょうか?」
「お願い。ところで美鈴ちゃん、東山さんが気にしてたよ」
「何をですか?」
「美鈴ちゃんが同席しなかったこと。どうしたのかって聞かれたから、社長に同行しているって答えておいたよ」
「そうですか……」
「今度会った時にさあ、昔話でもしてみたら?」
「篠原さん、すみません。当時のことは、楽しい思い出ばかりじゃないので」
少しだけ、声のトーンが低くなってしまう。
「あっ、ああ。ごめん」
父親を亡くしている事情を思い出したのか、篠原さんがしまったという顔をした。
「ごめん。デリカシーがなかったな。ただ、東山さんはいい人だよ。気にかけてくれてるみたいだからさ」
「はあ……」
そうは言われても、「同じ発表会に出ていましたね」以上に話が広がるとも思えないんだけど……
「じゃあ、コーヒーお願い」
篠原さんはそう言い残すと、副社長室に入っていった。