三月はいなくなる子が多いから
校門はまだ遠くに見えた。
園田さんは私の応えを聞いて、
何やら思案げに、、口を開かなかった。
「変ですか…?」
「そんなことねぇよ。目から鱗が落ちたんだよ。
そういう考え方があんだな。
温室育ちの坊ちゃんやお嬢ちゃんと違うなあ。
つまんねぇ応えじゃなかったもん。
さすがは高等部からの編入組か、、そうだろ?
平野さん?」
そう言って、
ニヤッといやらしい笑みを浮かべ私を見遣った。
私は改めて驚いて返事ができずにいた。
言い淀む私を園田さんは、
「ん? あたしのこと、イケメンを抱きまくってる
XXXだと思ってたんだろ?
あのね、あたしはお前と同じただの高等部二年生だよ。
不幸なことに初恋さえまだなんだ。
勉強させてくれてありがとな」
そう言って
大きな目を垂らし、大きな口の口角を上げ、
本当に楽しそうに笑った。
初めての笑っているところを見た。
美人ってのは、
笑顔になると周りに幸福を振り撒くのか…
とはいえ、逆も言える。
園田さんが不機嫌そうにいる日はクラスメイトや先生たちは、
さわらぬ神に祟りなし、と園田さんを刺激しないようにと、
ピリピリしていた。
「あ、あの、いえ、違うんです…」