三月はいなくなる子が多いから
「私のことを知っていたのに驚いちゃって…」
クラスで一番地味である私のことを
名前(っていうか名字だけど)と、高等部から編入したことを
知っていたことに驚いてしまった。
断じて、園田さんが
私が想像もつかないような男の人との遊び方を
散々しているだろうな、
という勝手な想像を覆されたことに驚いたわけではない。
「はぁ? 同じ教室、40人もいないんだから、
知ってて当たり前でしょ。
それに高等部からこの学園に入ったっていう
変わり者の話はいろんなところから耳に入ってきてたんだよ」
園田さんの言う『いろんなところ』って
いったいどんなところ……?
「お前の牧田への片想いは応援するわ。
けどさ、お前は丘の上で育ったんだ。新関外の人間に関わらない方がいい。
それは平野さんにとってもそうだし、あたしにとっても、だ」
「だめ!」
自分で思っているよりも
大きな声がでてびっくりしてしまった。
「それじゃダメなんです…
もし今日、園田さんと友達になれなきゃ、
牧田先生との、特別な繋がりはきっともうないと思うんです…。
牧田先生はこう言ったんです…」
園田さんは自分勝手に騒ぐ私の言葉をちゃんと待ってくれていた。